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第35回中日産業技術賞 受賞2社のすごさを紹介します!

2021年12月2日 朝刊
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経済産業大臣賞にジェイテクト、中日新聞社賞にパイフォトニクス

 第35回中日産業技術賞(中日新聞社主催、経済産業省後援)の受賞技術・製品が決まった。選ばれた2件は、自動車の電動化を縁の下で支える高性能の蓄電池、多彩な用途に使える発光ダイオード(LED)の照明装置と、いずれも時代の要請に応えている。各賞の技術と製品を紹介する。

耐熱性に優れたリチウムイオンキャパシタ 脱炭素に貢献

 世界が脱炭素へ進む今、電動化へとかじを切る自動車は搭載する電装品が増え、より多くの電力を必要としている。陰ながら車の動作を支える蓄電池は、材料の特性などから大きな温度変化が苦手だった。常識にとらわれない発想でこの弱点を克服し、車のみならず、産業界から広く期待を集める存在に躍り出た。

 蓄電池の一種である「キャパシタ」は大きな電流を素早く出し入れすることが得意。ジェイテクトは蓄電池業界で最も遅い2013年、開発に乗り出した。シェア世界一を誇る車の電動パワーステアリングの補助電源を求めたのがきっかけだ。従来の蓄電池が能力を発揮できる温度は「60~マイナス20度」程度だが、温度変化が激しい車載用に要求されるのは「85~マイナス40度」。高温時は蓄電池を冷やす装置を動かすために電力を使う効率の悪さが課題だった。

 「なぜ耐熱性が上がらないのか、との疑問を専門外の視点で、原理・原則レベルからひもといたのが良かった」。こう振り返るのは蓄電デバイス事業部の西幸二部長(58)だ。金属材料が専門の西さんをはじめ得意分野が異なる5人で開発を始めたが、蓄電池の経験はほぼゼロ。蓄電池に欠かせない電解液が高温時に沸騰し、低温で凍るのを防ぐため、まず液の成分の構成を一から見直すことから始めた。

 70通りもの材料の組み合わせを試し、温度変化に強い電解液の開発には成功したが、キャパシタに使うと、なぜか性能を十分に発揮できない。原因を探る中で、キャパシタを構成する電解液と電極の「相性」が鍵を握るとみた開発チームは、さらに電極の材料を変えたことで、「85~マイナス40度」の環境下でも力を発揮できる水準に到達した。

 熱に強いと劣化も抑えられる。従来品は大きな電流を出し入れすると2000回で使い物にならなくなったが、開発品は12万~13万回繰り返してもほぼ劣化しない耐久性を兼ね備えた。

 19年に花園工場(愛知県岡崎市)で生産を始めて以降、性能の高さに目を付けた産業機械メーカーからの引き合いも多く、生産規模は年6万個と倍増した。世界一過酷と評される来年1月のダカール・ラリーでは日野自動車のレース車両のハイブリッド用主電源に採用。来年10月にはいよいよ電動車向けの量産に入る。

 性能が高い分、従来品の1.5倍ほどの製造コストがかかるため、安価な材料への切り替えも見据える。「次は低コスト化に加え、電力を多くためられる高容量化も目指したい」と西さん。技術革新への挑戦は続いている。 (河北彬光)

多様な光パターンのLED「ホロライト・シリーズ」 新たな市場を開拓

 狙った遠くの場所に強い光を放つ発光ダイオード(LED)の照明装置。「ホロライト」と名付けて2008年に発売し、直線や円環、十字、矢印など浮かび上がらせる光の形状によって製品をシリーズ化。幅広い用途で利用されている。

 光関連機器製造の浜松ホトニクス(浜松市)を経て06年に起業した池田貴裕社長(46)が、ホログラム(立体画像)を浮かび上がらせる照明の製作を知人に依頼されたことが開発のきっかけ。その際、LEDがまぶしい光を直線的に放つ性質に優れていることに気づいた。「皆はまぶしさを減らして照明を作ろうとしたが、僕はまぶしさで勝負しようと考えた」

 一般的な照明は光を広範囲に拡散して周囲を明るくするが、ホロライトは独自設計の特殊なレンズを使い、光の広がる角度をわずか1度に狭めることに成功。狭く絞った強い光が、50メートル先の暗闇でも1メートルの範囲を照らし出す。レンズを通してフィルムに被写体を結像するカメラの仕組みと似ており、レンズで集めた光を遠くで収束させることで、くっきりと見やすい光を届ける。さらにレンズの構造やLEDの種類を変えることで、光の形状や色を自在に変えられる。

 ただ、製品化してみたものの当初は使い道が分からなかった。そこで、年間20件もの展示会に出展して来場者の反応を探り、光を当てることで目視では難しい傷の有無を調べる検査用や、テレビやイベントでの演出用といった使い道を開拓。「用途はお客さんに教えてもらった」とほほ笑む。

 近年は工場内の危険箇所を知らせる啓発用としての需要が増え、累計約13億円の売り上げの6割を工場向けが占める。今年は高速で点滅する光で鳥獣を追い払う製品を開発し、定額で貸し出す事業も始めた。「用途は無限大。今後もひらめきや顧客のニーズを実現していきたい」と意欲を燃やす。 (中平雄大)

審査を振り返って 専門委委員会座長・鈴置保雄氏

 選考では、先進性・波及効果・市場性、チャレンジ性・成長性・実行性などを重視しました。

 経済産業大臣賞のジェイテクト「耐熱性に優れたリチウムイオンキャパシタ」は、自動車の電動化に不可欠な電動パワーステアリングのパワー不足の解消や効率化のため、大容量、大出力、長寿命が期待できるリチウムイオンキャパシタに着目し、自動車に必要な温度域(世界初の85~マイナス40度)で動作するよう、系統的な研究・開発を行ったもので、電源の小型軽量、省エネ、低コスト化につながっています。このような蓄電装置は、カーボンニュートラルへ向けての再生可能エネルギーの利用拡大、種々の分野で求められる電動化・電力化にも貢献すると期待されます。

 中小企業やベンチャー企業、スタートアップを対象とする中日新聞社賞のパイフォトニクス「さまざまな光のパターンをつくり出すLED照明」は、レーザーを用いることなく平行性が強く輝度の高い光源を実現したものです。視認性の高いパターンを生成でき、工場内のクレーンやフォークリフトの危険範囲の表示などの安全用途をはじめとし、各種演出、鳥獣害対策など広範な応用が期待されます。また、技術面だけでなく、用途の拡大を積極的に進めており、そのチャレンジ性も評価されました。

賞の変更点

 中日産業技術賞は今回から、優れた産業技術や製品開発を「経済産業大臣賞」「中日新聞社賞」の2賞によって顕彰することになりました。中日新聞社賞は中小企業、ベンチャー企業、スタートアップの取り組みを表彰します。従来の特別奨励賞は終了しました。

委員の皆さん(敬称略、順不同)

【選考委員】田中耕太郎(中部経済産業局長)大島宇一郎(中日新聞社社長)平田浩二(中日新聞社取締役編集担当)寺本政司(中日新聞社名古屋本社編集局長)

【専門委員】山田陽滋(名古屋大大学院教授)柳田秀記(豊橋技術科学大大学院教授)細川晃(金沢大教授)一ノ瀬宏昭(中部経済産業局地域経済部長)内匠逸(名古屋工業大教授)鈴置保雄(座長、愛知工業大教授)武藤陽一(中部科学技術センター専務理事)滝川浩史(豊橋技術科学大教授)高橋真之(特許庁審査第四部移動体通信システム技術担当室長)淡野正信(産業技術総合研究所中部センター材料・化学領域領域長補佐)室原豊明(名古屋大大学院教授)八島栄次(名古屋大教授)春日敏宏(名古屋工業大教授)

 今年の応募は43件あり、専門委員会で受賞候補を絞り、選考委員会で正式決定した。

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